プリンでバニラを主役にする。浸出時間と、種が沈まない仕込み
- バニラビーンズ
- 業務用
- 使い方
プリンは、牛乳と卵と砂糖でできています。 隠れるところがありません。
だから バニラの差が、そのまま商品の差になります。 専門店が成立している理由のひとつでもあります。
牛乳1Lあたりの使用量
目安は 牛乳 1L に対してさや 1〜2 本です。
バニラを前面に出す商品なら 2 本。 カラメルの苦味や生クリームのコクと組み合わせるなら 1 本から始めて調整します。
さや 1 本はおよそ 3g です。 1L に 2 本なら約 6g。1 日に 5L 仕込むなら 1 回で 30g という計算になります。 仕込み量から必要量を逆算する手順は バニラビーンズ1本は何グラムかにまとめました。
さやの長さと太さは 1 本ずつ違うため、同じ重量でも本数は前後します。 配合表には本数ではなくグラムで書いてください。 仕込みが安定します。
前日から浸けておく
プリンでいちばん効くのがここです。
その日に温めて 15 分おく、という進め方でも作れます。 ただし 前日から浸けたものと並べると、違いははっきり出ます。
手順はこうなります。
- 牛乳を 60℃ほどに温める
- 裂いたさやと、こそげた種を入れ、火を止める
- ふたをして常温まで冷ます
- さやを入れたまま冷蔵で一晩おく
- 翌朝、温め直してから卵液と合わせる
冷蔵で置くあいだも、香りは移り続けます。 低温なので飛びにくく、穏やかに、しかし深く入ります。
朝の作業は温め直すだけになるので、 仕込み時間は前日方式のほうが短くなります。 裂き方と種の取り方は バニラビーンズの使い方に書いています。
こすときに種を残す
卵液は、必ず一度こします。カラザと、固まりかけた卵白を取るためです。
ここで 目の細かすぎるシノワを使うと、種まで取られます。 黒い粒を見せたい商品では、これは損失そのものです。
やり方は二段階に分けます。
- 粗めのざるで受ける……さやの繊維とカラザを止め、種は通す
- さやの繊維が気にならなければ、ここで終わり
どうしても細かくこしたい場合は、 こし器に残った種を、スプーンで卵液に戻してください。 そこに集まっているのは、いちばん見せたいものです。
種が底に沈む
黒い粒がカップの底にだけ溜まる。プリンで最も多い相談です。
原因は、卵液がゆるいまま置かれている時間が長いことです。 型に注いでから蒸し器に入れるまでのあいだに、種は沈みます。
対策は三つあります。
- 注ぐ直前に必ず混ぜる。 ボウルの底からすくうように、静かに
- 一度に全部注がない。 型を並べてから、数回に分けて注ぎ足す
- 卵液を冷やしすぎない。 冷たいほど沈む時間が長くなります
注いだらすぐ加熱に入る。 これがいちばん効きます。 型に注いだ状態で 10 分置くと、その 10 分ぶんだけ沈みます。
粒を均一に散らす考え方は ジェラートとアイスで、バニラの粒を見せるにも書きました。 種は脂肪をまとうと団子になるので、こそげたあとに少量の砂糖とすり合わせておくとほぐれます。
カラメルとの関係
カラメルの苦味は強く、バニラを覆います。
カラメルを濃く焦がす設計なら、バニラは 2 本側に寄せてください。 逆に、カラメルを浅めにしてバニラを主役に据える設計もあります。 両方を強くすると打ち消し合います。
判断するときは、必ず 冷やした状態で味を見てください。 冷たいと香りは弱く感じられます。 温かいうちに「ちょうどよい」と決めると、提供時には足りません。 温度と香りの関係は バニラの香りは何でできているかに整理しました。
加熱温度と、香りの残り方
プリンは 85〜90℃ 前後で、湯煎や蒸し器を使って火を入れます。 オーブンで直接焼く菓子より温度が低く、時間も短い。 バニラにとっては有利な条件で、焼き菓子のように 「油脂に抱えさせて守る」工夫をしなくても香りは残ります。
その代わり、入れる量と浸出時間がそのまま結果に出ます。 温度を上げないことは、食感と香りの両方に効きます。
クリームを入れる場合
なめらか系のプリンでは、牛乳の一部を生クリームに置き換えます。
脂肪が増えると、香りは 抱えられて、遅れて立つようになります。 口に入れた瞬間ではなく、溶けてから来る。
そのため、生クリーム比率の高い配合では 仕込み直後の味見で「弱い」と感じても、足さないでください。 一晩冷やしてから判断します。 同じことがガナッシュでも起きます。 チョコレートとバニラの合わせ方に書いた通りです。
黒い粒は説明になる
カップの中に黒い粒が散っていることは、それ自体が商品の説明になります。
ただし、書ける範囲は決まっています。 香料で香りを付けたものに「バニラビーンズ使用」とは書けません。 産地をラベルに書くなら、ロットが変わったときの見直しも要ります。 表示の考え方は 「バニラビーンズ使用」と書ける条件にまとめました。
原価とサイズ
牛乳 1L から 8 個取れるとすると、1L に 2 本使っても バニラの原価は 1 個あたり十数円の範囲に収まります。 サイズ別の単価と計算は バニラの原価はいくらかに載せました。
使う量からサイズを決めます。1L に 2 本=約 6g として、
| 月間の仕込み量 | ひと月の使用量 | 向いているサイズ |
|---|---|---|
| 30L | 約180g | 200g |
| 80L | 約480g | 500g |
| 150L 以上 | 約900g〜 | 1kg |
プリンを主力にしている店は、1 バッチあたりのバニラ量が大きく、在庫がよく動きます。 香りが抜ける前に使い切れるので、まとめて買う効きが出やすい業態です。 サイズの決め方は 業務用バニラビーンズの選び方に整理しました。
引き上げたさやは洗う
牛乳と卵に使ったさやには乳脂肪が付いています。 流水で洗い、完全に乾かしてから次に回してください。 拭くだけで済ませられるのは、シロップや砂糖にしか使っていない場合です。
バニラシュガーや自家製エクストラクトへの回し方は 使い終わったさやを使い切るにまとめました。 継続してまとまった量が必要な場合はお問い合わせからご相談ください。
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