チョコレートとバニラの合わせ方。ガナッシュで香りを立てる
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ガナッシュにバニラを入れると、カカオの輪郭がぼやける。 そう感じたことがあるなら、量ではなく入れ方を見直す場面かもしれません。
チョコレートは、バニラを合わせるのがいちばん難しい相手です。 香りの強い素材どうしなので、単純に足すと打ち消し合います。
脂肪が香りをつかむ
ガナッシュは、カカオバターと乳脂肪でできた高脂肪の乳化物です。
バニラの香り成分は油に溶けやすく、脂肪に抱えられると揮発しにくくなります。 焼き菓子では利点になる性質ですが、ガナッシュでは別の顔を見せます。 口に入れて体温で溶けるまで、香りが出てこないのです。
つまりガナッシュのバニラは、食べた瞬間ではなく、少し遅れて立ちます。 仕込み直後に味を見て「弱い」と判断して足すと、 翌日には強すぎるものになっていることがあります。
判断は、必ず冷却して結晶が落ち着いてから。 最低でも一晩おいてから決めてください。
生クリームで浸出させる
入れ方はひとつです。チョコレートに直接ではなく、生クリームに移します。
- 生クリームを 60℃ほどに温める
- 裂いたさやと種を入れ、火を止める
- ふたをして 30 分以上おく(前日から冷蔵で一晩がより確実)
- 再び温め直し、さやを引き上げてから刻んだチョコレートに注ぐ
- 中心から乳化させる
前日から冷蔵で浸けておく方法は、香りが穏やかに、しかし深く出ます。 翌朝に温め直すだけなので、朝の仕込み時間も短くなります。
さやを入れたまま乳化させないでください。 繊維がガナッシュに残り、口当たりが落ちます。
カカオ分で使い分ける
同じ量を入れても、チョコレートの側で受け取り方が変わります。
| ベース | バニラの効き方 | 生クリーム1Lあたりの目安 |
|---|---|---|
| ダーク(カカオ分70%前後) | カカオが強く、埋もれやすい | 0.5〜1本 |
| ミルク | 乳の甘さとよく合う | 1本 |
| ホワイト | カカオの香りが無く、主役になる | 1〜2本 |
ホワイトチョコレートがいちばんバニラを活かせます。 カカオマスを含まないぶん、香りの余白が大きい。 ホワイトのガナッシュやボンボンで、バニラを商品名に出す設計は成り立ちます。
逆に ダークで入れすぎるのは損です。 カカオの複雑さを覆ってしまい、「何かの香りがする濃いチョコ」になります。 ダークでは、バニラを主役にせず角を取る役目に留めるほうがうまくいきます。
さや 1 本はおよそ 3g です。使用量の逆算は バニラビーンズ1本は何グラムかにまとめました。
クーベルチュールに入っているものと重なる
見落としやすい点です。
クーベルチュールの原材料に、バニラ香料やバニラビーンズが入っている製品があります。 その上からさやを足すと、香りが二重になります。
「入れたのに効かない」ではなく「入れなくても効いていた」ということも起こります。 使っているクーベルチュールの原材料表示を、一度確認してください。
表示の面でも影響します。 香料入りのクーベルチュールを使いながら 「バニラビーンズ使用」とだけ書くと、実態と表示がずれます。 書ける範囲は 「バニラビーンズ使用」と書ける条件に整理しました。
種の粒は見えない
ダークのガナッシュに種を入れても、黒い粒は見えません。 生地が黒いので、見た目の情報にはなりません。
そこで、こういう分け方ができます。
- ダークのガナッシュ……さやだけを生クリームに浸出させる
- こそげた種……ホワイトのガナッシュやアイス、クリームなど、色の薄いものへ回す
さや 1 本から取れる種は多くありません。 見える場所に種を、見えない場所にさやを振り分けると、無駄が出ません。
種のストックの作り方は 自家製バニラペーストと仕込みストックに書きました。
水分と日持ち
ボンボンショコラでは、水分活性が日持ちを決めます。
浸出に使ったさやは水分を含んでいます。 引き上げるときに、しっかり絞ってから外してください。 といっても、生クリームに戻る量はごくわずかです。 配合を変えるほどではありませんが、 さやを入れたまま保存に回すことだけは避けてください。
浸出で目減りしたぶんの生クリームは、 配合表の重量まで足して調整します。温めると数%は蒸発します。
使い終わったさやは洗う
生クリームに使ったさやには乳脂肪が付いています。 流水で洗い、完全に乾かしてから次に回してください。
ショコラの仕込みは冬に集中するので、さやが一時期にまとまって出ます。 バニラシュガーやエクストラクトへの回し方は 使い終わったさやを使い切るにまとめました。
どのサイズを買うか
ガナッシュのバニラは、アイスや焼き菓子ほど量を使いません。 生クリーム 1L に 1 本なら、月に 20L 仕込んでも 60g ほどです。
ショコラが中心の店なら 100g、 クリーム系や焼き菓子と併用しているなら 200g が現実的な単位になります。
開封後は 3 か月以内に使い切れる量を目安にしてください。 サイズの選び方は 業務用バニラビーンズの選び方に書いています。
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