カヌレのバニラ。寝かせる時間を浸出に使い、中心に香りを残す
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カヌレは、焼き菓子のなかでもバニラに厳しい条件がそろっています。 200℃を超える温度で、1 時間近く焼き続けるからです。
それでも、割ったときに香りが立つカヌレはあります。 違いは バニラをどこに残すか を決めているかどうかです。
香りは外側で抜け、中心に残る
カヌレの断面は二層になっています。 厚く焼き固まった外側と、もちもちしたカスタード状の中心です。
外側は長時間の高温で水分が飛び、香りもいっしょに抜けます。 一方、中心は水分を抱えたまま焼き上がるので、温度が上がりきりません。 香りが残るのはこの中心のほうです。
焼き菓子全般では、焼成後にシロップや仕上げで香りを足す方法が使えます (焼き菓子でバニラの香りを残す)。 ところがカヌレは焼きっぱなしで出す菓子なので、あとから足せる場所がほとんどありません。 生地の段階で、中心に届く量を入れておくのが基本になります。
生地1Lあたりの使用量
出発点は 生地 1L に対してさや 1 本です。 牛乳 500ml で仕込む配合なら、生地はおよそ 1L になるので 1 本が目安です。
バニラを前面に出したい店は、牛乳 500ml に 2 本まで増やします。 牛乳 1L に 1〜2 本という、カスタード系の目安と同じ幅に収まります (バニラビーンズ1本は何グラムか)。
さや 1 本はおよそ 3g ですが、長さと太さは 1 本ずつ違うため、 同じ重量でも本数は前後します。 配合表には本数ではなくグラムで書いておいてください。 寝かせる日数を変えたときに、何が効いたのかを切り分けられます。
温浸出は60℃前後で
牛乳を沸騰させるレシピが多いのですが、浸出のためには沸かす必要はありません。
- 牛乳を 60℃前後に温める
- 裂いたさやと、こそげた種を入れて火を止める
- ふたをして 30 分ほど置く
- バターを溶かし、粗熱を取ってから粉・卵と合わせる
バターをこの段階で溶かしておくと、脂肪が香りをつかんで生地の中へ運びます。 脂肪と香りの関係はバニラの香りは何でできているかに書きました。
さやは浸出後も生地に入れたまま寝かせます。取り出すのは型に流す直前です。
寝かせる時間が、そのまま浸出になる
カヌレの生地は、冷蔵で 24〜48 時間寝かせるのが一般的です。 粉を落ち着かせ、焼成中に生地が型から浮き上がるのを抑えるための工程ですが、 バニラにとってはそのまま浸出の時間になります。
さやを入れたまま寝かせると、温浸出の 30 分では出きらなかった香りが 低温でゆっくり生地へ移ります。 発酵生地で冷蔵の長時間発酵を浸出に使うのと同じ考え方です (ブリオッシュと発酵生地)。
寝かせを 24 時間から 48 時間に延ばすと、香りの厚みは変わります。 食感への影響もあるので、香りだけを見て決めず、焼き上がりの断面と並べて比べてください。
沈んだ種は、流す前に戻す
寝かせているあいだに、種は容器の底へ沈みます。 上澄みから順に型へ流すと、最初の数個には種がほとんど入らず、 最後の数個に固まります。
型に流す前に、底からゆっくり混ぜ戻してください。 泡立て器で勢いよく混ぜると空気が入り、焼成中に生地が浮く原因になります。 ゴムべらで底をさらうように、大きく混ぜれば十分です。
1 回に流す量が多い店は、生地を小分けの容器に移してから流すと、 最後まで種の量がそろいます。 種が沈む問題はプリンでも起きます。対処の考え方は プリンでバニラを主役にすると共通です。
ラムとの役割分担
カヌレのもう一つの香りはラムです。 ラムは香りが強く、入れすぎるとバニラの甘い香りを覆います。
役割を分けて考えると配合が決めやすくなります。
| 香り | 役割 | 入れる時点 |
|---|---|---|
| バニラ | 中心の甘い香り。食べ進めて残る | 牛乳の温浸出から |
| ラム | 割った瞬間に立つ香り | 生地が冷めてから |
ラムは生地が温かいうちに入れると、アルコールといっしょに香りが飛びます。 生地の粗熱が取れてから加えてください。
使い終わったさやを回す
型に流す前に取り出したさやには、まだ香りが残っています。 卵と乳を含む生地に浸かっていたものなので、流水でよく洗ってから乾かします。
乾かしたさやをラムの瓶に入れておくと、次のバッチ用のラムに香りが移ります。 カヌレの店であれば、さやの行き先として最も無駄がありません。 ほかの使い道は使い終わったさやを使い切るにまとめました。
日産数から仕入れ量を出す
カヌレは専門店として 1 日に数百個を焼くことも多い菓子です。 仕入れ量は、日産数から逆算しておくと欠品しません。
生地 1L からおよそ 20 個取れるとすると、計算はこうなります。
| 日産数 | 生地 | さや | 1 か月(25 日稼働) |
|---|---|---|---|
| 100個 | 5L | 5本(約15g) | 約375g |
| 200個 | 10L | 10本(約30g) | 約750g |
| 400個 | 20L | 20本(約60g) | 約1.5kg |
200 個を焼く店なら月に 750g ほどで、1kg で仕入れると 1 か月あまりで使い切る計算です。 1 個あたりのバニラ原価はおよそ 5 円で、売価に占める割合はわずかです (バニラの原価はいくらか)。
開封後は 3 か月を目安に使い切れる量で仕入れると、香りが落ちる前に回せます。 月 1kg を超える使用量で、継続して仕入れたい場合は お問い合わせからご相談ください。
まとめ
- 香りが残るのはカスタード状の中心。生地の段階で中心に届く量を入れる
- 目安は生地 1L にさや 1 本。前面に出すなら牛乳 500ml に 2 本まで
- 温浸出は 60℃前後で 30 分。さやは入れたまま寝かせる
- 24〜48 時間の寝かせが、そのまま低温の浸出になる
- 沈んだ種は、型に流す前に底からゆっくり混ぜ戻す
- ラムは粗熱が取れてから。使ったさやは洗って乾かし、ラムの瓶へ
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