ブリオッシュと発酵生地でバニラを効かせる。長時間発酵を浸出に使う
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ブリオッシュにバニラを入れても、焼き上がると分からない。 焼き菓子より、さらにはっきり起きます。
発酵生地には、焼き菓子には無い事情がいくつもあります。 順に見ていきます。
発酵生地が不利な三つの理由
焼成が高温で長い。 クッキーやパウンドケーキより高い温度で、水分を飛ばしながら焼きます。 揮発する香りにとっては、いちばん厳しい条件です。
発酵中に香りが生まれる。 酵母は、発酵の過程でアルコールや有機酸を作ります。 これはパンの美味しさそのものですが、 バニラの香りは、その中に紛れます。 無臭の生地に足すのとは違う、という前提が要ります。
水分が多い。 油脂に抱えさせて守る、という焼き菓子の常套手段が使いにくい。 ブリオッシュのようにバターの多い生地なら効きますが、 一般的な菓子パン生地では油脂の比率が足りません。
香りを残す基本の考え方そのものは 焼き菓子でバニラの香りを残すにまとめました。 ここでは発酵生地に固有の話だけを扱います。
冷蔵長時間発酵を浸出に使う
いちばん相性がよいのがこれです。
オーバーナイトで冷蔵発酵させる生地なら、その時間がそのまま浸出時間になります。
配合の牛乳を人肌に温め、裂いたさやと種を入れて 30 分ほどおく。 冷ましてから捏ね上げ、生地を冷蔵に入れる。 翌朝には、香りが生地全体に回っています。
浸出だけを別工程にすると仕込みが一つ増えますが、 もともと冷蔵に入れる生地なら、増える手間はほぼゼロです。 牛乳を温める工程を前日の最後に足すだけで済みます。
さやは、捏ね上げる前に引き上げてください。 繊維が生地に残るとクラムに黒い筋が出ます。 種はそのまま入れて構いません。ブリオッシュの黄色い断面に、黒い粒がよく映えます。
湯種やポーリッシュには入れない
中種法や湯種法を使う場合、バニラは中種側に入れないでください。
湯種は熱湯を使うので、その時点で香りが飛びます。 中種やポーリッシュは長時間発酵するあいだに酵母の香りが強く出るので、 バニラを入れても埋もれます。
入れるのは本捏ねの液体、それも仕込み水ではなく牛乳側です。 乳脂肪が香りを抱えます。
生地とクリーム、どちらで効かせるか
菓子パンでは、ここを決めるだけで作業量が変わります。
| バニラの残り方 | 使用量 | |
|---|---|---|
| 生地に入れる | 焼成で大きく減る | 多く必要 |
| クリームに入れる | よく残る | 少なくて済む |
クリームパン、メロンパン、デニッシュのように クリームやカスタードが入る商品は、クリーム側で効かせるほうが確実です。 焼成の熱を直接受けないうえ、脂肪と糖が香りを保ちます。
生地側は控えめにして、クリームで立てる。 これが、量あたりの効きがいちばん良い配分になります。
クリームの炊き方と、そこでのバニラの入れ方は アングレーズソースの炊き方が近い工程です。
一方、プレーンなブリオッシュのようにクリームが無い商品では、 生地側で勝負するしかありません。この場合は次の項に進みます。
粉1kgあたりの目安
生地に直接入れる場合、目安は 粉 1kg に対してさや 1 本です。
さや 1 本はおよそ 3g。 1 回の仕込みが粉 5kg なら 5 本、約 15g という計算になります。 逆算の手順は バニラビーンズ1本は何グラムかに書きました。
ここに、焼成で減るぶんを 2〜3 割上乗せして調整します。 焼き菓子より多めに見ておくのは、焼成条件が厳しいからです。
なお、さやの長さと太さは 1 本ずつ違うため、同じ重量でも本数は前後します。 配合表には本数ではなく グラムで書いておくほうが、仕込みが安定します。
バニラシュガーを配合に組み込む
発酵生地に向いた、もうひとつの方法です。
使い終わったさやで作ったバニラシュガーを、 配合の砂糖の一部と置き換えます。
菓子パン生地の砂糖は粉に対して 10〜25%あります。 そのうち 1〜2 割をバニラシュガーにするだけで、 香りが生地全体に均一に散ります。浸出の工程も要りません。
バニラシュガーの作り方と、砂糖を足しながら回し続ける方法は 使い終わったさやを使い切るにまとめました。 一度使ったさやを回す先としては、パン屋の配合がいちばん相性がよいと思います。 量を使い、毎日仕込むからです。
焼成後に足せるところ
焼き上がってから香りを足せる場所も、パンにはいくつかあります。
- シロップ……ブリオッシュやサヴァランに打つシロップにバニラを浸出させる
- アイシング……粉糖にバニラシュガーを混ぜる
- フィリング……焼成後に絞るクリームやバタークリーム
焼成後に触れる部分は、熱を受けないぶん香りがそのまま残ります。 生地の使用量を上げるより、こちらのほうが効率がよいことが多いです。
使う量からサイズを決める
粉 1kg に 1 本=約 3g として計算します。 1 日に粉 20kg 仕込む店なら、バニラを使う商品が全体の 1 割でも、ひと月で 180g ほど。
菓子パンを数種類回している店なら 100g では足りず、 500g が現実的な単位になります。
開封後の目安は 3 か月以内に使い切れる量です。 判断の材料は 業務用バニラビーンズの選び方にまとめました。 継続してまとまった量が必要な場合はお問い合わせからご相談ください。
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