エッセンス・オイル・エクストラクト・ペースト。原価と用途で選び分ける
- バニラビーンズ
- 業務用
- 使い分け
すべてをさやで賄う必要はありません。 形態ごとに得意な工程が違うので、商品ごとに配分を決めるほうが原価も香りも収まります。
まず 5 つの形態を、性質の違いから整理します。
5つの形態
バニラエッセンス は、香料をアルコールや水に溶かしたものが大半です。 水溶性で 加熱に弱く、焼成すると香りが飛びます。 冷菓や、火を止めたあとに加える工程に向きます。 少量で香りが立つぶん、入れすぎると人工的な印象が前に出ます。
バニラオイル は油性の香料です。加熱に強いため、焼き菓子で使われます。 エッセンスと名前が似ていますが、向き不向きはほぼ逆になります。 この 2 つを取り違えたまま使っていて、焼き上がりに香りが残らないという相談は少なくありません。
バニラエクストラクト は、さやをアルコールに漬けて香り成分を抽出したものです。 香料と違って複数の成分が混ざるため、香りに厚みが出ます。 液体なので生地にも混ざりやすく、少量ずつ足して調整できるのが利点です。
バニラペースト は、種を含んだ濃縮状のものです。 種の粒を見せたいが、さやを裂く手間は省きたいという場面で使われます。 仕込みの人数が少ない店では、これが現実的な選択になることもあります。
バニラビーンズ(さや) は、いちばん情報量が多い形態です。 種の見た目、さやから出る香り、温浸出でしか出ない立ち上がり方があります。 使い終わったあとに二次利用ができるのも、さやだけの特徴です。
使い分けの目安
| 工程 | 向いているもの |
|---|---|
| 牛乳・クリームを温める(アングレーズ、プリン、アイス) | さや。温浸出で香りを移す |
| 焼き菓子の生地 | さや(種を油脂に練り込む)+ 補助にオイル |
| 焼成後の追い香、シロップ、アンビバージュ | エクストラクト |
| 冷菓の仕上げ、火を止めたあと | エクストラクト、エッセンス |
| 種を見せたいが手間を省きたい | ペースト |
| 大量のクリームに軽く香りを付ける | エクストラクト |
温度がかかる工程を先に洗い出すのが、判断の近道です。 80℃を超える時間が長いほど、水溶性の香料は残りません。 詳しくは焼き菓子でバニラの香りを残す方法に書いています。
原価は「全部さや」で考えない
さやは形態のなかでもっとも単価が高い素材です。 そのぶん、種が見える商品にだけ集中させるという配分が現実的です。
たとえば、こう組みます。
- 看板のアイスクリームとプリンは、さやを温浸出して炊く
- 焼き菓子の生地は、さやの種を油脂に練り込み、足りないぶんをオイルで補う
- シロップやアンビバージュは、自家製エクストラクトで賄う
- 大量に流すホイップは、エクストラクトを少量
この配分なら、香りの印象が問われる商品を落とさずに、全体の使用量を抑えられます。 どこにさやを使ったかが、そのまま商品の説明に書ける材料にもなります。
原価の実数はバニラの原価はいくらかで計算しています。
自家製エクストラクトが効く
使い終わったさやは、洗って乾かせばエクストラクトの材料になります。 一度炊いたさやでも、アルコールに漬ければ香りは出ます。
つまり さやを使えば使うほど、エクストラクトの原料が溜まっていくということです。 仕込み量が多い店ほどこの循環が回りやすく、 1kg を主力に据えている店では エクストラクトを買わずに済んでいるケースもあります。
漬け込みには度数 35 度以上の蒸留酒を使い、2 か月ほどおいてから使い始めます。 一度仕込めば、減ったぶんに酒とさやを足しながら長く使い続けられます。 作り方はバニラエクストラクトの作り方、 さやの二次利用は使い終わったさやを使い切るにまとめました。
置き換えるときの目安
エクストラクトに置き換える場合、さや 1 本(約3g)に対しておよそ小さじ1〜2が出発点です。 ただし自家製は仕込みの濃さで変わるため、数字をそのまま信じずに一度試してください。
エッセンスは香りの方向が違うので、同じ量で置き換えると別のものになります。 置き換えではなく、香りを足す用途と考えるほうが失敗しません。
表示について
原材料表示や商品説明で「バニラビーンズ使用」と書けるのは、実際にさやを使った場合だけです。 香料で香りを付けたものを、さやを使ったかのように書くことはできません。
どの商品にどの形態を使ったかは、仕込みの記録として残しておくことをおすすめします。 問い合わせを受けたときにすぐ答えられますし、 配合を見直すときの出発点にもなります。
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